クロボー/サルバ宿
2017/12/09(Sat)
冒頭設定
::
サルバに到着したのは昼間。
通り過ぎてクロスに向かってもいい時刻だが、エクスペルを離れるクロードのためにか、一泊することとなった。
アーリアに残るレナたちも、夕暮れが近づくと故郷に戻った。大きく手を振る姿。
今は名残惜しくとも、レナは他の仲間とはまたすぐ会える。
クロードとも、地球が遠い場所と知りつつも、きっとまた会えると信じているのだろう。みんな。ボーマンも。
クロード以外の全員が、再会を想っている。
「ニーネさんへのお土産ですか」
宿の部屋、ボーマンはベッドの上で小柄なジャム瓶を手でもてあそんでいた。
容赦なく床に散らばる細かな砂を、ざりざりとスニーカーで踏みつぶしながら、すぐ隣に腰掛ける。
「まあな」
「長旅の帰りなんですから、アクセサリーとか……買っていったらどうですか?」
ボーマンが放り出す瓶はぼふんと可愛らしい音を立て、ベッドに寝ころんだ。
「そっちも抜かりねぇよ、ネーデじゃ買い損ねたからな」
かわりに足で影になっていた、すぐ傍から宝石ケースを取り出す。
開いて見せることはないが、手首だけで軽く振る仕草に、中にある繊細な金具の音が聞こえるようだった。
秘密を見せびらかされているように思うのは、ただの嫉妬だろう。
「俺のセンスだとあいつ気に入ったためしないからな。レナに相談したら、セリーヌやアシュトンも覗きに来てよ」
三人がオススメする中から、ルビーのブローチを選んだと語る。情熱的な真紅が素敵、なんて売り文句。
そういえばまだネーデに行く前にあった誕生日にも、アクアマリンのペンダントを贈ったとか言っていたか。
「しかし、情熱っていうとニーネっていうよか、……なんつーか」
「僕も」
僕も誘ってくれてもいいのに、そんな言葉が口をつきそうになるが、押し留まる。
自分がその場にいても、宝石は綺麗だな、くらいの感想しか浮かばないくせに、何を言おうとしているのだろう。
ましてや妻に選ぶ宝石なんて。その場にいなくて良かったのだ。
「はあ? お前にはもうやっただろ」
「え」
別に、ねだったりなんかするわけが。
「クロードって服のセンスはないが、アクセサリーはセンスあるよな」
にやりとしながら、ケースの角でさす先は、クロードの喉元。
ネーデの雪山で激しい吹雪がおさまるまで待つ間、洞窟でなにを作るでもなくサファイアを弄っていたボーマン。
寒いのを言い訳に身を寄せ合いながら、僕にくださいと囁いてねだった、フィートシンボル。
もうねだっていたし、貰っていた。
「クロードのが情熱的なんだよなあ」
なんでそんなに、そんな言葉を、柔らかく笑って告げるのだろう。
どうやら甘いジャムまで喉に詰められたらしく、言葉が出ない。
服のセンスだって悪くないですよ、だとか。簡単な反論さえ銀色の思い出に埋め尽くされる。
ただ、胸元に触れて、シャツごしに握るしかできなかった。
::
次回クロス
雪山でフィートシンボル作って渡すネタもどっかにあるはず
そのあとどうなるかは地球行く小説のやつな、大体繋がってるけど分岐するかもなやつ
背景画像めっちゃすごいから動揺するだろ
予定していたエクスペルガイド本にWさんからゲスト寄稿していただいていた原稿です
ガイド本の作成がどうにも追い着かなくなってるので、ひとまず
本来は発行後に考えていた宿屋でクロボーいちゃつかせる絵を作るよ!!次はクロス。
こっちはクロボーなし画像。
とにかく描き込み繊細さすごいのでクリックで拡大してみてね。
ついでに、以前塗ってくれたチサトさん
No.2180|SO2関連|