アストラ小説9本目
2020/08/27(Thu)
やや不健全5000字
ウルガー視点一人称で、ルカやシャルスとストリップバーに行く話
小説というより、だらだら会話してる文。スケベはしてない。
カナシャル要素、あっさりだけどモブ女体に喜ぶ描写、ルカはほんのりウルガー意識描写を含む
これも一旦置き
厄介な奴らに捕まった。
普段よく行くバーに来たのが間違いだった。隅のテーブルで芸術家と王に挟まれ、二人で勝手に話が進んでいる。お前らはアトリエと城に帰れ。
「絶対、複数で行った方が怪しまれませんよ」
髪を後ろで束ねて、いかにも作業中に抜け出してきたという格好のルカが、いつものことだが勝手にオレの注文したポテトフライを摘んで食う。
「あ、サイトにクーポンあるみたいだよ」
前髪を上げて、いかにも小さなパーティから抜け出してきたという格好のシャルスが、さっさとタブレットで調べた店のアドレスを送ってくる。
「ボク、こういうお店は初めてだなあ。ヴィクシアにもあるんだけど、ボクが行くと取締りと思われちゃうから」
「オイラも! 思うより芸術ショーらしいんすけど、ひとりだとちょっとなーって思ってたんで。ウルガーさんが行きたいだなんて、いい機会っすよねえ」
「行きたいわけじゃねえよ。店の営業が終わってからでも、オレは構わねえんだ」
ジャーナリストの仕事で、情報を隠していそうな従業員の一人に話を聞きに行くだけだ、と説明したはずだ。ストリップの店だと分かった途端に、大はしゃぎだコイツら。
「何言ってんすか。絶対お金落としてくれた客相手のが、話したくなりますよ」
「そうだよウルガー。仕事なんて終わったらすぐ帰りたいものだよ」
それは、そうかもしれねえが……二人ともある意味で『客商売』か。詳しい内容が話せねえからか、オレひとり落ち着かなくなっているのも、あるのかもしれねえな。睨んで聞く相手でもなく、ため息をつく。
脳天気がいたほうが、不審がられないかもしれねえ。
「お、なになに? どこ行くの?」
室内着にブルゾンを羽織った格好の大将が、ほろ酔いの赤らんだ顔でトイレから戻ってくる。シャルスがすぐに腕を差し伸べ、転ばないよう椅子へと自然に誘導した。
「カナタはダメだよ」
なんで……ああ、そうか。大将は新婚だったか。大将がダメとなると、シャルスもついてこねえだろ。
「タクシー呼ぶからカナタだけ帰ってくれる?」
たまに有無を言わせず辛辣だよなシャルス。なんだよ、シャルスは大将優先してろよ。けど、ルカと二人でってのも、こう……気まずい気がするな。……悪いな大将、ひとりで帰れ。
「えー?! なんでだよお、オレも行くぜ! 一緒に行きてえ!」
「だーめ」
何故か大将の顎を、ゆるやかに撫でるシャルス。なんでだ。その手つき、いるか? ルカが興味津々になってるじゃねえか……おい、肩に胸押し付けんな。あ、くそ、ポテト全部食われてる。
「分かった、えっちなお店だな? スケベなんだな?! おっぱいいっぱい?」
うっわ、酔ってんな。
「そう、おっぱい。だから、うちに帰ってね? アリエスに怒られても擁護しないよ?」
顎にあった手が、するすると首や鎖骨、そして胸筋にたどり着く。
「やーん!」
わざとらしい野太い声で笑いながら、でかい胸を揉まれてる。完全に酔っ払いのやりとりなんだが、だが……だから、その動きは、いるのか? いらねえだろ? なんで顔埋めてんだ? なんでその頭を撫でてんだ? 普段なら大将は、少なくともオレがいるときは嫌がるのに、酔うとひでえな。大丈夫かコイツら。
「まーたイチャイチャイチャイチャと、それの方がまずいんじゃないんすかねえ」
シャルスたちには聞こえないような小声で、ルカが背後からささやいてきたかと思うと、コイツまでオレの胸揉んできやがった。酔ってんじゃねえぞ、ねえよ! 大将みたいなのついてねえよ! 手首を掴んで引き離すと、簡単に離れた。
「いやあ、ウルガーさんもわりといい体してますよ。自信もってください」
「うるせー黙れ」
「そうなんだ?」
反応すんなシャルス。大将のを気が済むまで揉んでろ。
大将はタクシーでひとり帰される。大将がぼんやりしている間に、シャルスが大将の分の代理会計を済ませていた。タクシー代も当然のように支払ってたし、甘やかしてんな。
オレたち三人はその足で目的地にたどり着いた。
あまり治安がいい区域でもないが、ルカは帽子を被った悪戯妖精のように、すんなりと馴染んでいる。シャルスは大将の上着を借りてスーツジャケットの代わりに袖を通していたが、いや、こいつの身なりの良さは服じゃ無理だろ。
地下への入口を指し示す電光案内板が、静かに瞬くバー。合法だが、怪しげだ。
「へっへっ。オイラたち未婚トリオ、初めての体験っすね!」
女性は入場料が半額近く安いようだが、ルカも男性料金で入った。なんだ、今日は男の気分だったのか。ならオレの胸をなんで揉んだんだ。……いや女の気分でも揉むな。仕返しされないからって調子に乗りやがって。
瓶入りのやや高いドリンクを買い、ステージの部屋にたどり着くと、ショーの途中だった。青白いライトがしっとりとした色気ある音楽とともに薄暗い部屋を照らし、賑やかな歓声の中、女の踊りを引き立てていた。半裸だ。大きな乳房が派手に揺れている。
ぎょっとしながらも全部じゃないのか、とちょっと肩透かしに思った瞬間、するすると腰布が流れるように落ち、ふとももが露出した。広げる長い足。当然のように履いていない。
「わ」
嬉しげな感嘆が、シャルスから上がる。……意外だな。
少ない席は殆ど埋まっていたが、ルカがきょときょとと周囲を見回し、空いているソファ席に座る。視線はステージに食い入っている。続けてオレの隣に座ったシャルスも、視線は前方だ。オレは瓶の蓋を開く。
「……女の体にも興味あったんだな」
「ボクは生物ぜんぶ好きだよ」
呟きが声に出ていたようで、笑顔のまま囁き声で答えられた。
てっきりシャルスは、『人間は大将だけ』だと思っていた。ルカは元々、女のも男のも女同士も男同士も全般見ていて、オレにも幾つか勧めてくるくらいオープンなせいで知っていたが、シャルスは生物ならなんでもいいのか。
「カナタの体が一番気持ちいいだけで、他の生物も魅力的さ」
本当にコイツら、ヤッてないんだよな? ……オレには関係ないが、グループ内でゴタゴタされると厄介だ。誰か一人でも疎遠になったり禁句になるのは、嫌だ。
「カナタには内緒ね。拗ねちゃうから」
ウインクしようがしまいが、そんな話しねえよ。
アリエスとの仲をなんだかんだ取り持つシャルスだから、大将の浮気になるから帰したのかと思っていたが……、もしかして、シャルス自身が女に興味がある姿を大将に見せたくなかったんじゃないかと思えてくる。拗ねるのかよ。
シャルスの感覚がいまいちわからねえが、大将以外にも性欲があるなら、いいことなんだろう。……性欲か? 生物呼ばわりしといて、女に興味があるのとは違うのか? いやでもシャルスは生物が好きだしな。ああもう知らねえ。
ショーのあとの客の動きも収まり、次は、光も音もやや明るい雰囲気へと変わる。堂々と手を振って出てきた、ひらひらと薄布を纏う細身の女。あいつだ。ポール棒との絡みに、客たちの歓声があがる。
「お、ウルガーさんの好みなんでしょ! 目の色が変わりましたよっ」
「仕事の女なだけだ」
聞いてねえのか、ルカはオレを通り越してシャルスに耳打ちしだす。
「ウルガーさんのリスト、小悪魔お姉さんで乳控えめなの多いんすねえ〜」
「おい、他のやつに言うな」
真ん中にいるオレにも当然聞こえる。
そんなこと……いや、でかいよりスレンダー系が最近いいだけで、別にそこまで偏ってねえ、はず、気に入ったの思い出すとそればっかりな気もするが! 確かに、……ステージの、……いい、が。景気良く衣服を脱ぎ捨てていく艶かしいダンスには、卑猥さだけじゃない感覚はある。芸術かどうかと言われると、オレにはよく分からねえが。居心地は悪くない。
「そうなんだ。カナタは、乳房が豊かな教師との純愛ものが多いかな?」
「シャルスも大将のをバラすな」
そのあたり、大将と好み合わねえな。教師ものの良さとか全く分からねえ。
「あ、でもオイラこの前、金髪ショートお嬢様のご奉仕もの勧めたんすよ。これで抜くと戻れねえ気がするとか言ってたくせに、続編まで買ってたっすよ」
おい、やめろ。やめろ。ルカ、お前その顔、絶対分かっててやっただろ。あれだろ、以前見せてきた全然抜けないやつだろ……シャルスに言うな。
「へええ知らなかったなあ。今度見せてもらおっと」
分かってんのか分かんねえな……
ショーが終わり、客との交流時間。他の奴らがいる前で直接聞くわけにもいかないが、ある単語ひとつで、ぴくりと反応した。わずかな一瞬ののち、あとでね、と唇が笑う。
控え室を出た廊下の隅で、情報源を出さないという約束で、意外とすんなり話を聞けた。なるほどな、彼女もあいつの被害者か。
客の顔は踊りながら見えていたらしく『美少年二人を侍らせてじっと熱視線を向けてた坊や』なんて印象を告げられたが、あえて否定はしねえ。話を聞きたい相手にわざわざ『両脇がうるさいのを無視してただけだ』なんて事実を言うほど、オレはガキでもないからな。
「美人だったっすよねえ。別にオイラは気にしてませんけど、あの仏頂面の鼻の下伸びるとこ、一度見てみたいじゃないっすか」
店から出るとルカとシャルスが、外灯の下に佇んでいた。目立つから、先に帰れと告げておいたはずなんだが。
「あれ、ウルガーさん早かったっすね」
「簡単に話してくれたからな」
「お疲れさま。ルカが、エッチなことしてないか心配してたよ」
シャルスが穏やかに告げ口をした途端、ルカが奇妙に慌て出した。
「あ、あれですよ! ほら! もしもウルガーさんが童貞卒業しちゃったら、このトリオも解散じゃないっすかー!」
「なに馬鹿なこと言ってんだ」
んなわけあるか。オレが女と関わるたび、すぐそっちに繋げやがる。いいか、オレが最初にそんなもんからは脱退してやるからな、覚悟しとけ。
「あはは、未婚トリオじゃなかったんだ?」
「平たく言えば童貞トリオっすよ! あっシャルスさんが非処女で経験済みなら、ちょっと審議しますけど」
「大丈夫! 最後まではしてないよ」
最後までは? なんでこいつ、いちいち強烈に匂わせてくるんだ?
「それよりウルガー、来週もまた来ようかなってルカと話してたんだ」
「ハマったのかよ。オレは行かねえぞ」
思ってたよりは、まあ、悪くなかったがな。非現実的で。
「来週はなんと、男のステージなんすよ! オイラ、女気分に調整しときます!」
ますます行かねえよ。調整とかできんのかよ。
男のステージは、女ステージと違ってお触りタイムが充実してるだの、下着に札が挟めるだのと、今調べたのか楽しそうに話していた。
ともあれ渡されていた女の写真を、いらねえからルカの尻のポケットに差し込んだ。
後日、大将から出掛ける誘いのメッセージが届いた。
『シャルスと明日の夜ストリップ見に行くぜ、ウルガーも行かないか? ルカは予定入っちまったらしい』
『行かねえ』
即返事をしてやる。なんだ、結局誘ってもらえたのか。それ男ダンサーだけどな。どうせ聞かされていない。女ダンサーだと思い込んで店でびっくりしてる顔が見たい気もしたが、そんな好奇心で身を滅ぼすオレじゃねえ。
『ザックにも断られたー』
『あ、ウルガーもだめかー?』
悪いな。
『アリエスももうフニ以外の女性陣で観てきてんだよ。楽しそう』
ゆっくりと来るメッセージに返信せず、無視して引き続き記事を書いていると、シャルスからも届く。相変わらず、無意味に大量の動物の絵文字に埋もれた文面だ。
『明日カナタとストリップ見に行くんだ。二人きりだとまずいかな。どう思う?』
デートできてよかったな、という皮肉めいた感想しか浮かばねえ。なんでオレに相談すんだ。よく二人で出掛けるじゃねえか。
『お願いがあるんだ。明日の夜二十三時すぎに通話かけてくれる?』
なんでだ。……ちょうど、ショーの終了時間か?
『ボクがカナタの裸を見たくなっても、理性を戻してくれると嬉しいな』
『お酒が入ったカナタ、本当におかしくなるんだボク』
『どうしよう今からカナタにいっぱい課金したい気分になってきた』
『酔ってるときだと気付かれないんだ』
『たぶん胸揉む以上のことするよ、いいの?』
いいの? じゃねーよ。よくねーけどしらねーようるせーよ。混乱してるんだろうが立て続けに送ってくんな、ひとりで困ってろ。合意ならいいんじゃねえの? お前らは完全にアウトだと思うが、お節介する気は起きない。二十三時にコールくらいはしてやってもいいが、覚えていたらな。
こっちも返信せず無視して、オレは記事の仕上げに専念する。
今度はルカから通話が入ったが、これも無視だ。カナタさんたち二人きりになっちゃってるじゃないですか、とかどうせそんなとこだろう。
【♡拍手】
ウルガー視点一人称で、ルカやシャルスとストリップバーに行く話
小説というより、だらだら会話してる文。スケベはしてない。
カナシャル要素、あっさりだけどモブ女体に喜ぶ描写、ルカはほんのりウルガー意識描写を含む
これも一旦置き
厄介な奴らに捕まった。
普段よく行くバーに来たのが間違いだった。隅のテーブルで芸術家と王に挟まれ、二人で勝手に話が進んでいる。お前らはアトリエと城に帰れ。
「絶対、複数で行った方が怪しまれませんよ」
髪を後ろで束ねて、いかにも作業中に抜け出してきたという格好のルカが、いつものことだが勝手にオレの注文したポテトフライを摘んで食う。
「あ、サイトにクーポンあるみたいだよ」
前髪を上げて、いかにも小さなパーティから抜け出してきたという格好のシャルスが、さっさとタブレットで調べた店のアドレスを送ってくる。
「ボク、こういうお店は初めてだなあ。ヴィクシアにもあるんだけど、ボクが行くと取締りと思われちゃうから」
「オイラも! 思うより芸術ショーらしいんすけど、ひとりだとちょっとなーって思ってたんで。ウルガーさんが行きたいだなんて、いい機会っすよねえ」
「行きたいわけじゃねえよ。店の営業が終わってからでも、オレは構わねえんだ」
ジャーナリストの仕事で、情報を隠していそうな従業員の一人に話を聞きに行くだけだ、と説明したはずだ。ストリップの店だと分かった途端に、大はしゃぎだコイツら。
「何言ってんすか。絶対お金落としてくれた客相手のが、話したくなりますよ」
「そうだよウルガー。仕事なんて終わったらすぐ帰りたいものだよ」
それは、そうかもしれねえが……二人ともある意味で『客商売』か。詳しい内容が話せねえからか、オレひとり落ち着かなくなっているのも、あるのかもしれねえな。睨んで聞く相手でもなく、ため息をつく。
脳天気がいたほうが、不審がられないかもしれねえ。
「お、なになに? どこ行くの?」
室内着にブルゾンを羽織った格好の大将が、ほろ酔いの赤らんだ顔でトイレから戻ってくる。シャルスがすぐに腕を差し伸べ、転ばないよう椅子へと自然に誘導した。
「カナタはダメだよ」
なんで……ああ、そうか。大将は新婚だったか。大将がダメとなると、シャルスもついてこねえだろ。
「タクシー呼ぶからカナタだけ帰ってくれる?」
たまに有無を言わせず辛辣だよなシャルス。なんだよ、シャルスは大将優先してろよ。けど、ルカと二人でってのも、こう……気まずい気がするな。……悪いな大将、ひとりで帰れ。
「えー?! なんでだよお、オレも行くぜ! 一緒に行きてえ!」
「だーめ」
何故か大将の顎を、ゆるやかに撫でるシャルス。なんでだ。その手つき、いるか? ルカが興味津々になってるじゃねえか……おい、肩に胸押し付けんな。あ、くそ、ポテト全部食われてる。
「分かった、えっちなお店だな? スケベなんだな?! おっぱいいっぱい?」
うっわ、酔ってんな。
「そう、おっぱい。だから、うちに帰ってね? アリエスに怒られても擁護しないよ?」
顎にあった手が、するすると首や鎖骨、そして胸筋にたどり着く。
「やーん!」
わざとらしい野太い声で笑いながら、でかい胸を揉まれてる。完全に酔っ払いのやりとりなんだが、だが……だから、その動きは、いるのか? いらねえだろ? なんで顔埋めてんだ? なんでその頭を撫でてんだ? 普段なら大将は、少なくともオレがいるときは嫌がるのに、酔うとひでえな。大丈夫かコイツら。
「まーたイチャイチャイチャイチャと、それの方がまずいんじゃないんすかねえ」
シャルスたちには聞こえないような小声で、ルカが背後からささやいてきたかと思うと、コイツまでオレの胸揉んできやがった。酔ってんじゃねえぞ、ねえよ! 大将みたいなのついてねえよ! 手首を掴んで引き離すと、簡単に離れた。
「いやあ、ウルガーさんもわりといい体してますよ。自信もってください」
「うるせー黙れ」
「そうなんだ?」
反応すんなシャルス。大将のを気が済むまで揉んでろ。
大将はタクシーでひとり帰される。大将がぼんやりしている間に、シャルスが大将の分の代理会計を済ませていた。タクシー代も当然のように支払ってたし、甘やかしてんな。
オレたち三人はその足で目的地にたどり着いた。
あまり治安がいい区域でもないが、ルカは帽子を被った悪戯妖精のように、すんなりと馴染んでいる。シャルスは大将の上着を借りてスーツジャケットの代わりに袖を通していたが、いや、こいつの身なりの良さは服じゃ無理だろ。
地下への入口を指し示す電光案内板が、静かに瞬くバー。合法だが、怪しげだ。
「へっへっ。オイラたち未婚トリオ、初めての体験っすね!」
女性は入場料が半額近く安いようだが、ルカも男性料金で入った。なんだ、今日は男の気分だったのか。ならオレの胸をなんで揉んだんだ。……いや女の気分でも揉むな。仕返しされないからって調子に乗りやがって。
瓶入りのやや高いドリンクを買い、ステージの部屋にたどり着くと、ショーの途中だった。青白いライトがしっとりとした色気ある音楽とともに薄暗い部屋を照らし、賑やかな歓声の中、女の踊りを引き立てていた。半裸だ。大きな乳房が派手に揺れている。
ぎょっとしながらも全部じゃないのか、とちょっと肩透かしに思った瞬間、するすると腰布が流れるように落ち、ふとももが露出した。広げる長い足。当然のように履いていない。
「わ」
嬉しげな感嘆が、シャルスから上がる。……意外だな。
少ない席は殆ど埋まっていたが、ルカがきょときょとと周囲を見回し、空いているソファ席に座る。視線はステージに食い入っている。続けてオレの隣に座ったシャルスも、視線は前方だ。オレは瓶の蓋を開く。
「……女の体にも興味あったんだな」
「ボクは生物ぜんぶ好きだよ」
呟きが声に出ていたようで、笑顔のまま囁き声で答えられた。
てっきりシャルスは、『人間は大将だけ』だと思っていた。ルカは元々、女のも男のも女同士も男同士も全般見ていて、オレにも幾つか勧めてくるくらいオープンなせいで知っていたが、シャルスは生物ならなんでもいいのか。
「カナタの体が一番気持ちいいだけで、他の生物も魅力的さ」
本当にコイツら、ヤッてないんだよな? ……オレには関係ないが、グループ内でゴタゴタされると厄介だ。誰か一人でも疎遠になったり禁句になるのは、嫌だ。
「カナタには内緒ね。拗ねちゃうから」
ウインクしようがしまいが、そんな話しねえよ。
アリエスとの仲をなんだかんだ取り持つシャルスだから、大将の浮気になるから帰したのかと思っていたが……、もしかして、シャルス自身が女に興味がある姿を大将に見せたくなかったんじゃないかと思えてくる。拗ねるのかよ。
シャルスの感覚がいまいちわからねえが、大将以外にも性欲があるなら、いいことなんだろう。……性欲か? 生物呼ばわりしといて、女に興味があるのとは違うのか? いやでもシャルスは生物が好きだしな。ああもう知らねえ。
ショーのあとの客の動きも収まり、次は、光も音もやや明るい雰囲気へと変わる。堂々と手を振って出てきた、ひらひらと薄布を纏う細身の女。あいつだ。ポール棒との絡みに、客たちの歓声があがる。
「お、ウルガーさんの好みなんでしょ! 目の色が変わりましたよっ」
「仕事の女なだけだ」
聞いてねえのか、ルカはオレを通り越してシャルスに耳打ちしだす。
「ウルガーさんのリスト、小悪魔お姉さんで乳控えめなの多いんすねえ〜」
「おい、他のやつに言うな」
真ん中にいるオレにも当然聞こえる。
そんなこと……いや、でかいよりスレンダー系が最近いいだけで、別にそこまで偏ってねえ、はず、気に入ったの思い出すとそればっかりな気もするが! 確かに、……ステージの、……いい、が。景気良く衣服を脱ぎ捨てていく艶かしいダンスには、卑猥さだけじゃない感覚はある。芸術かどうかと言われると、オレにはよく分からねえが。居心地は悪くない。
「そうなんだ。カナタは、乳房が豊かな教師との純愛ものが多いかな?」
「シャルスも大将のをバラすな」
そのあたり、大将と好み合わねえな。教師ものの良さとか全く分からねえ。
「あ、でもオイラこの前、金髪ショートお嬢様のご奉仕もの勧めたんすよ。これで抜くと戻れねえ気がするとか言ってたくせに、続編まで買ってたっすよ」
おい、やめろ。やめろ。ルカ、お前その顔、絶対分かっててやっただろ。あれだろ、以前見せてきた全然抜けないやつだろ……シャルスに言うな。
「へええ知らなかったなあ。今度見せてもらおっと」
分かってんのか分かんねえな……
ショーが終わり、客との交流時間。他の奴らがいる前で直接聞くわけにもいかないが、ある単語ひとつで、ぴくりと反応した。わずかな一瞬ののち、あとでね、と唇が笑う。
控え室を出た廊下の隅で、情報源を出さないという約束で、意外とすんなり話を聞けた。なるほどな、彼女もあいつの被害者か。
客の顔は踊りながら見えていたらしく『美少年二人を侍らせてじっと熱視線を向けてた坊や』なんて印象を告げられたが、あえて否定はしねえ。話を聞きたい相手にわざわざ『両脇がうるさいのを無視してただけだ』なんて事実を言うほど、オレはガキでもないからな。
「美人だったっすよねえ。別にオイラは気にしてませんけど、あの仏頂面の鼻の下伸びるとこ、一度見てみたいじゃないっすか」
店から出るとルカとシャルスが、外灯の下に佇んでいた。目立つから、先に帰れと告げておいたはずなんだが。
「あれ、ウルガーさん早かったっすね」
「簡単に話してくれたからな」
「お疲れさま。ルカが、エッチなことしてないか心配してたよ」
シャルスが穏やかに告げ口をした途端、ルカが奇妙に慌て出した。
「あ、あれですよ! ほら! もしもウルガーさんが童貞卒業しちゃったら、このトリオも解散じゃないっすかー!」
「なに馬鹿なこと言ってんだ」
んなわけあるか。オレが女と関わるたび、すぐそっちに繋げやがる。いいか、オレが最初にそんなもんからは脱退してやるからな、覚悟しとけ。
「あはは、未婚トリオじゃなかったんだ?」
「平たく言えば童貞トリオっすよ! あっシャルスさんが非処女で経験済みなら、ちょっと審議しますけど」
「大丈夫! 最後まではしてないよ」
最後までは? なんでこいつ、いちいち強烈に匂わせてくるんだ?
「それよりウルガー、来週もまた来ようかなってルカと話してたんだ」
「ハマったのかよ。オレは行かねえぞ」
思ってたよりは、まあ、悪くなかったがな。非現実的で。
「来週はなんと、男のステージなんすよ! オイラ、女気分に調整しときます!」
ますます行かねえよ。調整とかできんのかよ。
男のステージは、女ステージと違ってお触りタイムが充実してるだの、下着に札が挟めるだのと、今調べたのか楽しそうに話していた。
ともあれ渡されていた女の写真を、いらねえからルカの尻のポケットに差し込んだ。
後日、大将から出掛ける誘いのメッセージが届いた。
『シャルスと明日の夜ストリップ見に行くぜ、ウルガーも行かないか? ルカは予定入っちまったらしい』
『行かねえ』
即返事をしてやる。なんだ、結局誘ってもらえたのか。それ男ダンサーだけどな。どうせ聞かされていない。女ダンサーだと思い込んで店でびっくりしてる顔が見たい気もしたが、そんな好奇心で身を滅ぼすオレじゃねえ。
『ザックにも断られたー』
『あ、ウルガーもだめかー?』
悪いな。
『アリエスももうフニ以外の女性陣で観てきてんだよ。楽しそう』
ゆっくりと来るメッセージに返信せず、無視して引き続き記事を書いていると、シャルスからも届く。相変わらず、無意味に大量の動物の絵文字に埋もれた文面だ。
『明日カナタとストリップ見に行くんだ。二人きりだとまずいかな。どう思う?』
デートできてよかったな、という皮肉めいた感想しか浮かばねえ。なんでオレに相談すんだ。よく二人で出掛けるじゃねえか。
『お願いがあるんだ。明日の夜二十三時すぎに通話かけてくれる?』
なんでだ。……ちょうど、ショーの終了時間か?
『ボクがカナタの裸を見たくなっても、理性を戻してくれると嬉しいな』
『お酒が入ったカナタ、本当におかしくなるんだボク』
『どうしよう今からカナタにいっぱい課金したい気分になってきた』
『酔ってるときだと気付かれないんだ』
『たぶん胸揉む以上のことするよ、いいの?』
いいの? じゃねーよ。よくねーけどしらねーようるせーよ。混乱してるんだろうが立て続けに送ってくんな、ひとりで困ってろ。合意ならいいんじゃねえの? お前らは完全にアウトだと思うが、お節介する気は起きない。二十三時にコールくらいはしてやってもいいが、覚えていたらな。
こっちも返信せず無視して、オレは記事の仕上げに専念する。
今度はルカから通話が入ったが、これも無視だ。カナタさんたち二人きりになっちゃってるじゃないですか、とかどうせそんなとこだろう。
【♡拍手】
No.2657|彼方のアストラ関連|